事業目的は、会社が行う事業を示す定款の必須事項であり、登記簿にも記録されます。設立準備では「思いつく事業をすべて入れておけば安心」と考えがちですが、目的は可能性の一覧ではありません。これから取引する相手に、会社が何をするのかを説明する文章でもあります。
将来行うかもしれない事業をどこまで記載するかは、実際の相談でも多く寄せられる質問です。現在の仕事を中心に据え、近い将来の計画と許認可の要件を重ねていくと、必要十分な目的が見えてきます。
現在の事業を具体的に書く
出発点は、設立後すぐに売上を立てる事業です。「コンサルティング業」のような広い言葉を置くだけでは、実際に何を提供する会社なのかが伝わりません。誰に、どのような商品やサービスを、どのような方法で提供するのかを普段の言葉で書き出し、そこから登記に適した表現へ整えます。
ここで大切なのは、格好のよい表現にすることより、事業の実態と一致させることです。契約書、請求書、Webサイト、金融機関へ提出する事業資料と登記上の目的が大きく食い違うと、後から説明が必要になります。普段、お客様へ何を提供しているかを説明する言葉が、目的を考える一番よい材料になります。
将来の事業は現実的な範囲で加える
設立時点でまだ始めていない事業でも、具体的な準備や計画があれば目的へ加えられます。設立のたびに将来を完全に予測することはできないため、少し先の展開を見込むこと自体は不自然ではありません。
一方で、「いつか行うかもしれない」という理由だけで無関係な事業を並べると、会社の中心が見えにくくなります。登記簿は取引先や金融機関が確認することのある資料です。現在の事業から自然につながるか、数年以内に着手する計画があるか、準備を第三者へ説明できるかという順で考えると、残す目的と見送る目的を分けやすくなります。目的の数に万能な正解があるのではなく、会社の説明として一貫していることが重要です。
許認可を先に確認する
許可、認可、登録、届出が必要な事業では、目的の文言が申請要件に関係することがあります。会社を作った後で許認可を申請しようとしたところ、目的の表現が要件に合わず変更登記が必要になると、時間も費用も余計にかかります。
建設業、人材紹介、古物営業、旅行業などを予定している場合は、設立前に所管行政庁や担当専門家へ確認してください。目的は後から追加できますが、社員の意思決定、定款変更、変更登記と登録免許税が必要になる場合があります。設立登記と許認可を別々の作業にせず、事業開始までの一つの流れとして確認することが手戻りを防ぎます。
「前各号に附帯する一切の事業」の役割
目的の末尾には、記載した事業に付随する業務を含めるため、「前各号に附帯又は関連する一切の事業」等を置くことがあります。中心事業に伴って必要になる細かな業務を一つずつ列挙しなくてもよいようにする役割があります。
ただし、この一文があれば何でもできるという意味ではありません。記載した事業と独立した新しい事業まで、当然に含まれるわけではないからです。会社として収益の柱にする事業は個別に記載し、この一文はその周辺を支えるものと考えると分かりやすいでしょう。
相談時に伝えるとよい情報
相談前に登記用の文章を完成させる必要はありません。商品やサービスの内容、主な顧客、販売方法、設立後すぐに行う仕事、数年以内の計画を普段の言葉で説明できれば、目的案を整理できます。必要になりそうな許認可や資格が分かっている場合は、その情報も重要です。
事業目的を決める作業は、定款の欄を埋めることではなく、これから始める会社を短い言葉で説明する作業です。分からない名称を無理に並べるより、実際の取引を一つずつ話すところから始めるほうが、会社に合う目的へ近づきます。
参考となる公式情報
法務省は、目的を合同会社の定款に必ず記載する事項として案内しています。