合同会社の設立では、定款を作成した後、設立登記までに出資を履行します。「会社のお金なのに、なぜ個人口座へ振り込むのか」は、相談でよく聞かれる疑問です。答えは単純で、払込みの時点では会社がまだ成立していないからです。
難しいのは振込操作そのものではなく、定款、入金の順序、入金記録を一つの設立手続としてつなげることです。先にお金だけを動かさず、証拠を残せる形を確認してから進めます。
設立前は個人名義口座を使う
会社は設立登記によって成立するため、設立前の会社名義口座はありません。金銭出資では、社員となる人の個人名義口座を利用する方法が一般的です。この口座は、会社の営業用口座を先取りするものではなく、出資が実際に行われたことを示すための受け皿です。
社員が1人なら流れは比較的単純ですが、複数人が出資する場合は、どの社員の口座を使い、誰がいくら入金するかを定款と合わせて決めます。個人間の送金に見えても、登記では各社員が定めた出資を履行したことが分かる必要があります。
定款作成後に出資を履行する
法務省の案内では、社員になろうとする人は定款作成後、設立登記までに出資の全額を払い込むとされています。まだ会社の内容が固まっていない段階で入金すると、そのお金が今回の設立のための払込みなのか分かりにくくなることがあります。定款を作り、内容を確認し、払込みを行い、証明資料を整えるという順序を崩さないことが大切です。
口座に以前から出資額以上の残高があっても、それだけでは今回の払込みを示せません。必要なのは、誰が、いつ、いくらを払い込んだかが分かる取引記録です。自分名義の口座を使う場合でも、依頼先の案内に沿って入金の記録が残る方法を選びます。
通帳または取引明細で証明する
登記申請では、代表社員が作成する証明書に、預金通帳の写しや金融機関の取引明細表等を合わせる方法があります。金融機関名、支店名、口座番号、口座名義人と、払込日、金額、取引内容が一連の資料から確認できるようにします。複数社員の場合は、各社員の払込みを区別できることも必要です。
通帳なら表紙、口座情報のページ、入金記録のページが別々になることがあります。必要な範囲や綴じ方は、申請方法と会社構成によって変わるため、写真を撮る前に案内を確認しておくと撮り直しを防げます。
インターネットバンキングも利用できる
紙の通帳がない口座では、取引明細をPDFで保存したものや画面を印刷したものを利用できる場合があります。ただし、入金の一行だけを切り取ればよいわけではありません。金融機関、支店、口座番号、名義を確認できる画面も必要です。
表示項目が複数画面に分かれる場合は、どの口座のどの取引かがつながるように整理します。画像加工で必要な情報まで消すと、証明資料として使えなくなることがあります。プライバシー上見せたくない取引がある場合は、自己判断で大きく塗りつぶす前に依頼する司法書士へ確認してください。
入金前に確認すると手戻りを防げる
自己判断で資金を移動してから相談すると、日付や名義の関係で追加資料が必要になることがあります。定款案と社員構成が決まった段階で、払込口座、入金する人、金額、保存する画面を確認するのが安全です。
払込みは、会社へお金を移すだけの作業に見えて、設立内容が実行されたことを示す重要な場面です。順序と記録を意識すれば、通帳がない場合でも慌てずに準備できます。
参考となる公式情報
法務省と法務局は、通帳の写し、取引明細表、出資金領収書等による取扱いを案内しています。